Zac Fukuda

北海道移住DRAFT会議2023-24まで

「もしよかったら、3月に北海道移住DRAFT会議っていうのがあるので、参加してみてください。」

札幌を出発する前日、コワーキングスペースのコミュニティマネージャに言われた。10月4日の出来事だ。

デジタルノマド生活は移住先探検でもある。どこに住みたいか。どこに住むべきか。2月末時点で、移住先としての最有力候補は、北海道・札幌。とにかく自然と都市とがバランスよく調和された街に惹かれた。明治維新以降開拓された土地ということもあり、日本だけど日本特有のゴチャゴチャした感じが北海道にはない。そう感じた。

(北海道といっても滞在中は、函館経由で帰ったとき以外は、札幌から一歩も足を踏み出さなかったのだが。)

DRAFT会議へ出ることを決めたのは12月。3月の予定を考えている時だった。1月中旬から沖縄に行くことは既に決めていた。3月31日はふくい桜マラソンがある。Living Anywhere Commonsサブスクプランの関係上、最短2月末までは沖縄に、3月31日前1週間は福井近辺にいるとして、3月1~25日の予定をどう埋めるか。

本州に戻ってもまだ寒い。沖縄は本島、細かく言うとうるまにしか滞在したことがなかった。せっかくなので宮古島か石垣島にも行きたい。寒いのが嫌で沖縄に来ているので、わざわざ寒い北海道に行きたい気持ちは一切なかった。だが、移住先として冬の北海道を経験しておく必要性は感じていた。宮古・石垣をとるか。北海道をとるか。

二者択一を迫られた時、最善の決断方法がある。

「よし、どっちも行っちゃえ」

さすがに、味噌ラーメンと醤油ラーメンどちらを食べようかと悩んだ時、胃袋の限界があるから両方を食べようとは思わないのだが、「どちらも」という発想は意外性があり役にも立つ。まさに思考の盲点なのだ。

試しに宮古・石垣島へ行った場合と、宮古・石垣島・北海道すべてへ行った場合の費用を概算してみる。2、3万円ほどしか変わらない。馬鹿げた発想だが現実味も十分帯びている。こうして、日本の対を成す沖縄と北海道を往復する旅の予定は決まった。

那覇から新千歳へ向かう際は、一度、伊丹空港で乗り継ぎ。那覇–新千歳間はPeachであれば直行便もあったが、到着が19時頃になってしまう。これまで日本国内での乗り継ぎをしたことがなかったこと、札幌到着を少しでも早くして翌日に備えたかったことを踏まえ、LCCは避け、今回はJALを使うことにした。航空券代は1,000円ほどしか変わらなかった。

3月1日。400m×10本の朝ランを済ませ、正午、那覇を出発。新千歳へ到着するのは17時00分を予定していた。伊丹空港で飛行機の出発を待っている時、近くに座っていた学生であろう男の子が、友人に話かけている声が耳に届く。

「なんか雪のせいで、新千歳まで行って着陸できなかったら、大阪まで引き返してくるらしいよ。」

うん? まあ、若い人間の余計な心配だろう。とりあえず、自分に何ができるわけでもない。若者の声を政治家ごとく無視する。しばらくして港内アナウンスが流れる。

「JAL2009便新千歳行は新千歳空港の積雪により、飛行機が着陸できない可能性があります。万が一、着陸不可と判断した場合は、羽田空港または関西空港まで引き返し運航いたします。ご不明な点があるお客様は、サポートデスクまでお申し出ください。」

えっ。頭の中で、羽田空港か関西空港まで戻ってくることを想像する。翌日代理便は出してくれるのか。今晩どこに泊まるか。明日のDRAFT会議に間に合うか。2日目から参加でも問題ないか。そもそもなんで伊丹空港じゃなくて関西空港に引き返すの。

周りを見渡すが、乗客誰一人焦っている様子はない。冬の北海道行きの便にはよくあることなのだろう。そう自分を納得させ、至って冷静に搭乗時刻を待つ。

大体20分ほど遅れての出発だっただろうか。やはり乗客もアテンダントも、何事もないかのように振り舞い続けている。飛行機は新千歳へ一直線。

「とりあえず引き返しはなさそうだな」

津軽海峡上空を飛行している頃、勝手にそう思う。しかし、飛行機が着陸体制に入る様子はない。

「ただいま当便は、新千歳空港への着陸の順番待ちをしている状況でございます。お急ぎの皆様には、到着が遅れますこと、お詫び申し上げます。」

機内アナウンスが流れる。おそらくだが、新千歳上空を多数の飛行機が旋回飛行しているのだろう。客席から1番近くを旋回している飛行機は目視できない。たぶんパイロット席からでも無理だろう。何台の飛行機が旋回しているかは不明だが、飛行機同士がぶつからず、大した問題もなく無事に着陸できる航空システムには驚く。

しばらくして、飛行機は下降を始め、雲を通り抜ける。眼下には薄暗闇の中に白銀の世界が広がってる。スマホで写真を撮ろうと試みたが、窓ガラスにピントが合って、外にピントが合わない。しぶしぶスマホをポケットへ戻す。

札幌への到着はトータルで1時間遅れ、18時ちょっと過ぎ。20分遅れの出発だったので、40分以上長く飛行していたことになる。とりあえず、無事北海道へ来れたことに安堵する。

飛行機を降り、到着ゲートへ向かう。預け手荷物が出てくるまでの間、カバンの中からトレーナーとウィンドジャケットを取り出し、羽織る。最小限の荷物で生活しているので、コートやダウンジャケットは持っていない。北海道の寒さもウィンドジャケットで乗り切る覚悟。

なぜだかは不明だが、ここ最近、預け手荷物が早く戻ってくる。最初の荷物がベルトコンベアに乗って姿を現してから、数分で自分のカバンも出てきた。

時刻はおよそ18時30分。スマホで札幌行きの電車、エアポートの次発時刻を調べる。18時42分がある。一度は通った道。到着ゲートから駅までは自然に足が体を運んでくれる。少し駆け足。駅へ着き、切符を買い、改札をくぐってフォームへ降りる。後ろから2両目の車両に乗り込む。ほぼ満員。車両の真ん中あたりは人があまりいない。人の間を掻い潜り、自分の立ち位置を確保する。

予定より2分ほど遅れて電車が出発。向かう先は白銀の世界。