Zac Fukuda

職業

自分の職業を尋ねられると困る。なんと答えたらよいものか?

大学卒業当時は、基本的に、ウェブデザイナーと答えていた。卒業後2, 3年した時に作った名刺にはグラフィックデザイナー、ウェブディベロッパーと記載している。デザインもできます、コーディングもできます、ということをアピールするため、わざわざ職業を2つ記載した。

グラフィックデザイナー+ウェブディベロッパー=ウェブデザイナーとするのは安易だ。ウェブデザイナーの実態にばらつきがある。デザインを、仮に、ビジュアルプレゼーテーションの作成と定義したとして、大まかにウェブデザイナーは次の3種類に分類されるだろう。

  1. ウェブサイトをデザインするだけ人
  2. ウェブサイトのデザインとHTML&CSSのコーディングをする人
  3. ウェブサイトのデザインとフロント・バックエンド両方の実装・開発をする人

一般的には2.をウェブデザイナーと呼ぶ。オレもスクールでウェブデザイナーコースを受講し、授業内容はAdobeのソフトを使用したデザイン作成と、HTML・CSS・JavaScriptのコーディングだった。

数年前まで、1.の人たちは、「ウェブサイトを中心にデザインするデザイナー」と周りくどい自己紹介をしていた。ここ最近は面倒だから1.の人たちも自分たちをウェブデザイナー、カッコつけたい時はUIデザイナーと名乗ることが増えてきた。(厳密にいうと静的HTMLを出力するウェブサイトをいくらデザインしても、そこにユーザーインターフェースは存在しないのだけれど。)

オレは、能力面から述べると3.に該当する。では、いま、自分はウェブデザイナーかと問われると、違う。最近は、あまりデザインをしない。デザインから最終的な実装を担当することもあるが、その割合は減少傾向にある。なにより、プログラミングもできるのに、2.に思われるのは癪だ。デザインだけをするときは一切ない。したくないわけではない。お金が貰えるのであれば喜んでデザインだけの仕事も受注する。開発スキルを有してデザインできるので、その辺の通称UIデザイナーよりは、まともなデザインができる自信もある。近頃、オレの仕事はウェブディベロッパーとしてのものが8~9割を占める。なぜ、デザインの仕事が減っているのか。その背景は、自分の得意がプログラミング側に出ている、また、労働市場においてプログラマーの供給不足による相対的需要が多いことである。

なら、自分の職業をウェブディベロッパーと呼べばよいのだが、そうすると別の問題が浮上する。ウェブディベロッパーとウェブエンジニア、加えてプログラマー、それぞれの違いは何か?

ここで、ディベロッパーとエンジニアの前に、必ず「ウェブ」をつけるのには理由がある。ディベロッパーには都市開発者も含まれる。エンジニアにはメカニカルエンジニアも含まれる。オレは高専の機械工学科卒業だ。口頭での自己紹介であれば、大抵の場合、コンテキストで悟ってもらえるだろうが、念のため誤解を避けるため、オレはウェブをつけ忘れない。

ちなみにHTML&CSSだけしか書けない人は、ウェブディベロッパー、ウェブエンジニア、プログラマーのどれにも該当しない。彼らはコーダーになる。HTMLはマックアップ言語、CSSはスタイルシート言語であり、プログラミング言語ではない。ウェブディベロッパー、ウェブエンジニア、プログラマーが、仕事の一環としてHTML・CSSを書くことはある。

プログラマーには、ウェブディベロッパー、ウェブエンジニアの双方が含まれる、もしくは一部重複している。とりあえず、プログラマーと名乗れば間違いはない。3職の中では、プログラマーが1番音が短いので、面倒臭いから、プログラマーと名乗っていた時期はある。しかし、どこか抽象的で、やっていることが想像しづらい。印象が悪い。

問題はウェブディベロッパーとウェブエンジニアの違いだ。

developerは翻訳すると開発者、engineerは技術者となる。あまりパッとしない。

困ってGoogleで「web developer vs web engineer」と検索してみた。どうやら英語では、ウェブエンジニアではなく、ソフトウェアエンジニア(software engineer)という呼び方が一般的らしい。だとすると、問題は、ウェブディベロッパーとソフトウェアエンジニアの違いだ。いや、ウェブとソフトウェアの違いがわかれば、必然的に答えが見えてきそうだ。

ウェブから始まる単語には以下のようなものがある。ウェブサイト、ウェブアプリ、ウェブ決済。オレが制作するものは、ウェブサイト、ウェブアプリのどちらがほとんどだ。ウェブ=インターネットになるだろうか。自分がつくるものは、ブラウザとインターネットを使用してだけでしか閲覧・利用することができない。

ソフトウェアから連想されるものには、どのようなものがあるか。マイクロソフトのワード・エクセル・パワーポイント。アドビイラストレーター・フォトショップ。一般人にはわかりづらいかもしれないが、ウェブサーバーのアパッチ。しいてはPython、PHPなどのプログラミング言語もソフトウェアになるだろうか。OSもソフトウェアだ。あくまでオレのアイデア上だが、ソフトウェアとは、10数年前ならCDから、今ではすっかりインターネットからインストールする、パソコン(ハードウェア)に追加される機能とでもいうべきか。ソフトウェアの定義も難しく、また、おそらくだが多義に渡るだろう。

オレが作るものはソフトウェアよりは、ウェブに近く、より具体的だ。そうするとオレの職業は「ウェブディベロッパー」ということになる。

ただ、ソフトウェアエンジニアではない自分を発見してしまい、そうなりたい気持ちが芽生えてしまった。