Zac Fukuda

北海道移住DRAFT会議2023-24士別市キャンプイン - 3日目

前日同様、ちょくちょく目が覚める。しかし、少しでも疲れを残さないよう、予定時刻の七時半までは寝ようと自分に言い聞かせ、眠り続ける。

予定時刻に起床。一階に下り、シャワーを浴びる。ちょうど前にシャワー浴びていた人と入れ替わりで風呂場を使うことができた。次の人が待っているかもしれない。可能な限り手早く体を洗っていく。冬場のこの風呂は少し寒そうだ。キャンプインが暖かい季節に開催されてよかった。二十分弱ほどでシャワーを終え、歯を磨く。時刻は大体八時。予定通り。

この日に長期で滞在する物件へ移る可能性もあるから、念のため荷物のパッキングだけはしておく。荷物は三十リットルほどのリュックとビジネスバック。この中に四ヶ月分の荷物を詰めなくてはいけない。詰め込めることは既に長いノマド生活からわかっているが、洋服は綺麗に折り畳みトラベル用の真空パックに入れる。少しでも余計な体積が生じようものならリュックの中に荷物が入らない可能性がある。再パックは避けたい。それでも夏場のパッキングはかなり楽だ。今回のノマド滞在ではランニングシューズを二足から三足に増やした。(内一足は履いて移動する。)それでも、冬服を持っていた三月の時と比べると、リュックにはまだ余裕がある。いや、余裕があるというより丁度だ。三月はリュックを締めるとき荷物を押し込んでいた。「飛行機の中で破裂しないよな?」なんて心配もちょっとしたくらいだ。

三十分ちょっとでパッキングを終え、一階のリビングへ。ほとんどのメンバーは既に集まっており話しをしている。朝食を買う暇はなかったが、キャンプイン一日目、大学生選手がDRAFT会議の懇親会の時、一部ご馳走してくれたからと北海道限定のカップ焼きそばをもらったので、ケトルで湯を沸かし、一人みんなの間でそれを食べる。カップ焼きそばの他にまん丸の寒天も貰った。このカップ焼きそばには、茹でるのに使用したお湯を使って作れる中華スープの素が入っている。滅多にカップ焼きそばを食べない自分には、焼きそば+中華スープのセットが北海道限定なのか、一部最近のカップ焼きそばはそうなのかわからないが、道民はみな北海道の特産品のようにこの「捨て汁を使った中華スープ」を語る。周りのみんなはコーヒーを飲み始めるが、自分は中華スープを啜る。

自分が焼きそばを食べ終え、一息つき、キャンプインの振り返りが始める。コーディネーター夫婦の夫から始まり、反時計回りに発表をしていく。コーディネーター・夫の左隣に座っていた自分は最後の発表。エモい発表は苦手だ。時計回りの発表にならなかったことに安堵。みんなの発表を聞きつつ、自分の発表内容の構成を考える。たぶん一番エモくない発表はしたけど、そうは悟られないだろうくらいに内容をまとめ発表する。発表が終わったことで、ここから選手としての仕事が始るんだなと自覚する。
九時半ちょっと過ぎ、お土産を買いにまずは道の駅へ。といっても長期で士別に滞在する自分はお土産を買う必要はない。他選手、DRAFT会議スタッフは各々が好きなものをピックアップしていく。たぶんみんなが共通して買ったものは士別ラーメンだろうか。自分もいずれ食べてみよう。自分は前日同様、天サイダーを購入。

次は毎月九が付く日はクレープが安くなるからとSAIJOへ。しかし、ここで問題が。時短営業のため十一時までお店が開かない。しぶしぶSAIJOを後にし、士別市にある観光牧場・羊と雲の丘へ。真っ当なコーディネーターであればまず最初にここへ案内するのが定石と思われる。「もっとリアルな士別を知ってもらいたかったから、羊と雲の丘は時間が余ったらでいいかなぐらい。」コーディネーター・妻は言う。こういうユルさが士別の良いところ。

羊と雲の丘は当然小高い丘の上にある。周りも丘に囲まれているので、見通しが良いというわけではない。だが、丘が連なっている様は風情が感じられる。丘の隙間からは士別の市街地がちょこっと顔を出す。東遠方には山が見える。如何にも北海道らしい風景。士別の羊はサフォークという種類で顔だけ黒く、毛は白い。他の羊と違い、一度に一、二頭しか出産をしないから、繁殖率が低く、貴重な羊らしい。残念ながらこの日は放牧日ではなかった。羊は牧舎に納められている。囲いの脇には鐘が。羊が放牧されていれば、背景に羊が移る映えスポット。羊はいないがみんなで記念写真を撮る。ショップの中に入り、お土産とグッズを見学。既に道の駅に寄っていたので、新しくお土産を買うことはなかったが、ソフトクリームを買って食べる。羊の乳から作られたソフトクリームではなく、牛乳のソフトクリームである。羊の乳は臭みが強く食用には向かないとのこと。このソフトクリームだが、普通のクリームと違い、クリームが少し粗くなっており、舌あたりが感じられる。ソフトクリームを食べながら牧場を眺めつつ雑談。食べ終わりを無言の合図とし、丘の中腹あたりにあるめん洋館へ。皆は一度バンに乗り込んで移動したが、自分は少し丘を眺めながら風にあたりたかったので、徒歩で丘を下る。

皆から少し遅れてめん羊館へ入場。この施設にはいろいろな種類の羊たちが飼育されている。施設の中は羊の匂いが充満している。皆は既に羊たちに餌を与えている。餌を握り拳一つ分ほど分けてもらい、まだ餌をあまり貰えてなさそうな羊へそれを与えていく。人間と同じように羊にも強情なやつと控えめなやつとがいる。餌を貪りにくるのは強情なやつらだ。幾つかの種類の羊には餌を与えないでくださいというサインが囲いに飾られている。「本日は機嫌が悪いです」というような補足説明も書かれている。確かにそのサインが飾られている羊たちはどこかイライラしている印象。羊毛を使った手芸体験ができるコーナーもあるが、時間がないのでスキップ。施設を出て、士別駅へと向かう。

駅に着いたのは電車の出発二十分ほど前。自動券売機もなく、電車に乗って帰るメンバー三名は駅員から切符を購入する。自分はこれから四ヶ月間士別に滞在するので、帰りの切符はいらない。ここ一年ちょっと、遠方へ出向く時はいつも片道切符だ。DRAFT会議でキャンプイン時に見送る側になる選手もそう多くはないだろう。立ち食いそばを食べるかと言う案も浮上したが、流石にその時間はないので却下。電車が来るまでの時間は「次いつ士別に来ましょうか?」という話をする。自分が九月下旬までいるので、それまでにはもう一度集まりたいというのが全体の意向。

電車がもうすぐ到着する頃、駅員が乗客をプラットホームへ案内する。自動改札ではない。改札に掛かっていたロープを取り、順に切符を切っていく。各駅停車旭川行き二両編成が到着する。電車のドアが開き、三名は手を振りながら電車に乗り込む。ドアが閉まる。電車が出発しお互いもう一度手を振り合う。電車がホームから完全に姿を消す。北海道移住ドラフト会議2023-24士別市キャンプインが終わる。